突発性難聴になった話

突発性難聴になり、右耳が聞こえなくなった。その日記。

2020年2月24日 発症

朝起きて布団のなかでゴロゴロしていると、突然右耳がツーンとなって、キーンとした耳鳴りが聞こえ、耳が詰まったような感じになった。おかしいなと思い、しばらくほっとくと、治った感じだったので起き上がる。

しばらくすると、また同じような閉塞感があるが、しばらくすると治まる。一日中それが繰り返して、どうもおかしい。

右耳から機関車のようなシュッシュッというような耳鳴りがずっと聞こえていた。夜になっても治まらず、ネットで調べると突発性難聴と思われ、すぐに医者に行けと書いてある。中学生の娘曰く、医学の情報はネットの情報ほどあてにならないものはないので、明日医者で診てもらえとのこと。たしかにそのとおり。

昨日までは、なんともなく本当に突然のことだった。

2020年2月25日 診断

朝起きると、昨日より悪化していて、右耳は全く聞こえなくなっていた。正確にいうと、大きな音はスピーカーがひび割れたような音が聞こえる程度で、小さな音は全く聞こえず。耳鳴りも聞こえなくなっていた。めまいは全くなかった。

かかりつけの耳鼻科は、ネット予約できるが、祝日明けだからか、いっぱいだったので、朝一電話を入れ事情を説明する。緊急なのですぐに来いとのことで、朝一で病院に行く。

状況を説明し、聴力検査。右耳がかなり聴力が落ちていて突発性難聴とのこと。やっぱり。すぐに大きな病院を紹介される。

紹介された大きな医療センターは、耳鼻科から歩いてすぐのところなので、その足で病院に直行。

血液検査と聴力検査をして、若い先生に診てもらう。話を聞くと、原因は不明、治療はステロイドの点滴を一週間と、投薬二週間とのこと。完治するのは1/3で、治らないのが1/3、多少よくなるのが1/3の割合とのこと。まさに、シュレーディンガーの猫状態。徐々によくなることがあるが、半年くらいまでで、それ以降は回復しないらしい。左もなる可能性はあるかと聞いたが、両耳発症することはほとんどないとのこと。脳腫瘍などで神経を圧迫されることが原因の可能性もあるため、MRIの検査を後日するとのことだった。糖尿病などはないので、入院は必要ないとのこと。

そのまま、ステロイド点滴を1時間受けて、その日は終了。

聴力検査というのは毎年健康診断でやるが、いつも異常なしなので、大して気に留めていなかったが、あらためて検査結果を見ると何を検査していたのかよくわかった。これが、当日の検査結果。オージオグラムという。

横軸が音の周波数(Hz)で、縦軸が聴力レベル(dB)。ある周波数の音が最低限聞こえる音の大きさを表している。マーカーの数値より小さな音は聞こえない。✕は左耳、○は右耳の気導聴力(鼓膜を通して普通に聞く音)、] は左耳、[ は右耳の骨導聴力(骨の振動を通して聴く音)を表している。

正常な聴力は、だいたい20dB以下とのことで、左耳は問題ない。右耳は大きく落ちて、50dB程度となっている。

50dBは、静かな事務所や家庭用クーラー、換気扇くらいの音なので、それより小さい音は聞こえないということだ。もっとも、自動車などの大きな音は、スピーカーの音割れ状態なので、正常に聞こえるわけではない。

2020年2月26日 治療2日目

朝起きると、ピンピンピンという電子音のような耳鳴りがずっとしていて、耳に警報装置を取り付けられているみたい。

朝一で通院し、ステロイド点滴を40分受ける。初日は投薬量が多くて、あとは減らすとのこと。

ステロイドは、副腎皮質ホルモンの一種で、体内の炎症を抑えたり、免疫力を抑制したりする働きがあるらしい。血糖が上がるので、激しい運動はやめた方がいいかもと言われたので、朝のランニングと筋肉体操はしばらく休むことに。あと副作用として不眠になるようだ。確かに、昨夜は眠りが浅く朝はやく目覚めた。そもそも、不眠症なので慣れてはいるが、睡眠剤の服薬中なので、体も混乱状態に違いない。

2020年2月27日 治療3日目

朝起きると、警報音の耳鳴りは治まり、代わりにサーというホワイトノイズの耳鳴りに変わっていた。しょせんは神経と脳の問題で音は作られるので、壊れると毎日いろいろ変わって面白い。

昨日と同様、ステロイド点滴40分を受ける。

女性の高い声はどうも聞きづらいようで、看護師さんや受付の女の人の声が特に聞こえにくい。片耳だと聞こえてくる方角がよくわからないようで、受付の人が何人もいるので、名前を呼ばれても誰に呼ばれたかすぐにわからない。

片耳が聞こえないと、やはり絶対的に入ってくる音の量が減っているのがわかる。電気自動車などエンジン音の小さな車は、たしかに後ろからだと近づいてくるのがわからない。左は聞こえるので、さほど不自由というほどではないのだが、かなり違った感覚になる。

2020年2月28日 治療4日目

点滴の前に、話があるというので、診察室に呼ばれる。自分よりは年配の先生から、血液検査の結果、B型肝炎ウイルスの抗体があるので、再度血液検査をするように言われる。びっくり。

「毎年の健康診断で、B型C型の肝炎ウイルスの血液検査は陰性で異常なしだったのに、どうしてだろう?」と聞いたが、この医者はなぜか「会社の契約が。。。」とかわけのわからない説明を始めて何を言ってるのかさっぱりわからない。「今回だけ陽性反応がでた原因で考えられることは?」と訪ねても、「昔の注射器の使い回しで国に賠償請求がどうのこうの。。。でも私は弁護士じゃないからわからない」などいらない話ばかりで全く要領を得ない。そんなこと聞いてるんじゃない。「医学的なことだけ教えてくれ」と言ったら結局、「自分は専門医じゃないから消化器内科で聞け」とのこと。

じゃあ、結局今日はどうすればいいのかと尋ねると、隣の看護師さんがわかりやすく説明してくれた。今日これから血液検査のための採血をして、1週間後に消化器内科を受診するようにとのことだった。

医師の国家試験には、患者にわかりやすく説明できるコミュニケーション能力の判定はないのだろうか。腕の立つ医者よりも、話のできる医者の方がよっぽど良い医者と思うのだが。

結局、点滴の前に再度採血して、ステロイド点滴40分。

医者の話が意味不明だったため、娘には内緒で”ネット”でB型肝炎について調べてみる。訴訟ビジネスが横行しているようで、弁護士のサイトばかりが目立つ。医学的に正しい保証はないのでパス。学会や病院の公開資料や過去に受けた人間ドックの検査結果などを確認してようやく理解した。

  • 毎年の健康診断はHBs抗原を調べていて、これは陰性で異常なし
  • HBs抗原が陰性でも、HBs抗体やHBc抗体が陽性の場合があり、過去に既往歴があり抗体ができていることがある。予防接種でも抗体ができる。
  • 日本では、HBs抗原陽性者の割合は人口の1%程度、HBs抗体またはHBc抗体陽性者の割合は20%程度。
  • ステロイド投与のときは、肝炎ウイルスの検査をする。免疫低下による発症が考えられるため。

肝炎の予防接種をした記憶はないので、過去に感染したのかも知れないが、詳しいことはわからない。ウイルスのDNAタイプや抗体量を検査できるようだが、これが今日採血したもので、わかると思われる。

ふう。ストレスはいかんとのことだったのに、意味不明の医者によりどっと疲れ、この夜も眠れなかった。。。

参考文献:
日本肝臓学会. B型肝炎治療ガイドライン. https://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/hepatitis_b

高松赤十字病院. B型肝炎ウイルス再活性化. https://www.takamatsu.jrc.or.jp/archives/010/201702/B%E5%9E%8B%E8%82%9D%E7%82%8E%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E5%86%8D%E6%B4%BB%E6%80%A7%E5%8C%96.pdf

2020年2月29日 治療5日目

引き続き、ステロイド点滴40分。

今日は土曜で一般外来は休みのため、救急外来で点滴を受ける。となりで、転んだ記憶がないのに怪我しているおばあさんを女医さんが診ている会話が聞こえる。

右耳からは、あいかわらずホワイトノイズの雑音が聞こえている。キーンといった高音の耳鳴りじゃないので、変に気にならない。

続きはまた今度。。。

今日までの心境

1/3しか完治しないとのことだったが、不思議とショックも不安もない。おそらく、この病気、痛みと苦痛が全くないからだろう。不眠は眠いのにねれないという精神的苦痛と、翌日の極度の倦怠感を伴うため、とても辛い。怪我をすれば痛みという苦痛を伴い、これも辛い。でも、片耳が聞こえないというのは、ちょっと不便ではあるけれども、痛みがない。精神的にも、この年だし、売れない不眠症社長でしかないので、将来的な不安もない。音楽家や歌手じゃないので。

心配性の自分なのに、「このまま片耳不自由でも、まっ、いいかあ」という気分であり、マイナス感情が全然わかないのが、ある意味ふしぎではある。

40年以上いろいろ聞いてくれた右耳も休めてやろう。世の中、良きことと悪しきことの両方の音が聴こえる。右耳は悪いことを聞いてきたに違いない。これからは左耳で良きことのみを聞いて行こうじゃないか。

 

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