会計ソフトの消費税計算と浮動小数点演算誤差

個人事業の帳簿付けに某会計ソフトを長年使っていたのだが、今回かなりおかしなことになったので、もう今期から使うのをやめにしようと思う。

2017年度は、売上がかなり多かったので、晴れて消費税の課税事業者となった。つまり、2019年分の売上から消費税を納めなくてはならなくなったのだ。消費税は簡易課税の届けをだしたので、計算自体は簡単で手で計算してもたかがしれているのだが、会計ソフトを使っているので、申告書も自動作成してもらえる。

細かいところはおいておいて、消費税が113,400円と算出された。これは問題ないのだが、ここから地方消費税を計算するところに大きな問題があった。申告書では、上記消費税に17/63を乗じて譲渡割額というのを計算せよとなっている。この計算は、小学生でもできて、

113,400 ✕ 17 ÷ 63 = 30,600 

となる。余りも出ることなくきれいに割り切れる計算だ。ところが、その会計ソフトで計算すると、

30,599

という数字で申告書が作成されてしまう。「ああ、これバグだな」と思い、「計算まちがってますよ」と、会計ソフトのサポートに問い合わせした。

そうすると、「間違ってません。正しい計算です。」という回答が帰ってきた。いや、間違ってるでしょ、手計算でも電卓たたいても、30,600が答えで、30,599にならないでしょ。

再度、問い合わせると、「17÷63」を先に計算してかけると、30,599になるとの回答だった。最初から気づいていたが、これは「浮動小数点演算誤差を処理せず結果として出している」ということだ。コンピュータで小数点や割り算の計算をすると、2進数で処理をすることになるため、数値に誤差が生じることがある。今回の場合は、30,600となるところが、30,599.999999のような数値になっていると思われる。消費税申告書では、1円未満の端数は切り捨てろと書いてあるので、0.999999を何も考えずに切り捨てると、30,599となり1円の誤差がでる。

「いやいや、単にプログラムの誤差でしょ。手計算できれいに割り切れる計算ですよ。プログラム上の不具合でしょ。」と再度聞いたところ、「国税庁に計算式は確認をとっているので、問題ない。国税庁の確定申告コーナーと同じ計算でやっている。」との回答が届いた。おやまあ、国税庁を持ち出してきた。

でもこれ本当とは思えない。今回の申告書で、この誤差を含んだ数値のまま計算すると、手計算で計算した納税額より100円少なくなる。また、国税庁e-Taxの「確定申告書等作成コーナー」で消費税申告書を作ると、ちゃんと30,600円となり30,599円にはなっていない。当然、手計算とe-Taxの納税額は同じで、この会計ソフトの申告書だけ納税額が100円少なくなるのだ。

国税庁がこんなこと許すとは、にわかに信じがたい。1通あたり100円過少申告されるのだ。もしこれが許されるなら、積り積もれば何億という税収減につながる。こんなこと天下の税務署が許可するはずはないと思うのだが。

この会計ソフトは、老舗中の老舗で古くからある有名なソフトだ。私が使っていたのは、そのオンライン版である。当然、会計、税務ソフトのプロが開発しているはずである。にも関わらず、ヒラのプログラマーでもわかるような誤差対策がされていない。もしくは、対策はされていたが、バグがあったか、見過ごされたかだ。誤差が出ないような、もしくは誤差を補正する対策はいくらでもできる。私は、コンピュータによる数値計算を仕事にしていて、ソフト開発などもやっていたので特にこの手の話には敏感だ。

お金を扱う業務系基幹ソフトは、1円の誤差も許されないはずだ。にも関わらず、こんな初歩的なミスがあるとは驚く限りだ。まあ、百歩譲ってバグは仕方ないとしても、サポートの回答があまりにも、陳腐すぎて笑ってしまう。いろいろやりとりしたが、どこまで行ってもミスを認めることはなかった。最終的には、国税庁に確認したから問題ないという。でも、税務の素人から見ても明らかにおかしな計算であるし、国税庁を持ち出せば引き下がると思っているのだろう。ただ、実際それにより100円とはいえ過少申告させられてしまう。犯罪の片棒を担がされるのだ。

このまま、申告するとどうなるのかしらと思ったが、結局はe-Taxの申告コーナーで作った正しい申告書で申告を行った。もはや、今期はこのソフトを使うのをやめる。ちなみに前からテストしていた無償の会計ソフトだと、正しい納税額が計算されて問題ないことは確認済みだ。フリーのソフトの方がよっぽどできが良い。今期からは、無償ソフトで十分だ。

サポートの回答は大事である。自分たちが間違っていたとわかった時点で、素直に謝って対処していれば、1回のやりとりで終わった話だ。認めてしまうと大きな問題になると思っているのかもしれないが、このご時世後々になって認めると逆に命取りになるかも知れない。もっとも、これは本当にソフトのバグではなく自分たちの計算が正しいと思っているなら、それはそれで会計ソフトとしては失格だろうが。

いやそれとも、会計ソフトの方が正しくて、100円少ない申告でも問題ないのだろうか(この記事は私の思い込みである可能性は十二分にある)。それならそれで、ありがたい話ではあるが、計算する人(モノ)によって計算結果が違っていてもよいというのもいかがなものだろうか。真実はどうなのだろう。

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