家の外で怪奇音!正体はナンキンキノカワガ

ある日、家族がどこかで「カチカチカチ」とか「チュチュチュ」とかという音がすると言う。

どうも、一階のリビングの掃き出し窓の外で、その音がするという。確かに聞いてみると、「カチカチカチ」という高速な音がずっと続いている。気味が悪いが、夜だったし、原因がよくわからず、その日は寝ることに。

と、2階の寝室の窓を閉めようとすると、そこからも同じようなカチカチ音が聞こえる。どうも雨戸か窓のサッシの付近から聞こえる。こんどは、高速で高周波な金属音だ。しかも、それが延々続いている。

最初なにか生き物かと思ったが、とっても高速でカチカチとかコチコチとかいう音である。音声の動画を貼り付けておく。

微かに聞こえているが、カチカチという音がずっと鳴っているのがわかるだろう。いわゆる虫の音ではない。休みなくずっと続いている。音の感覚からして、なにか人工的な機械音のように感じた。ファンの音とか、機械の振動音の類だ。水漏れかとも思ったが、こんな窓の外に水配管も無いし、しばらく雨も降っていない。機械音にしても、この窓付近には電気系統の類はない。時計の音のようにも聞こえるが、時計はこの部屋にも、もちろん外にも無い。動画だと微かにしか聞こえないが、実際聞くと明らかに音源はすぐ近くにあり、結構大きな音がする。窓を閉めると聞こえが悪くなるので、壁の中というより、壁の外から音はしているようだった。

如何せん不眠症で眠りが浅いものだから、その日はうす気味悪く、寝付きも遅かったし、夜中何度も目が覚めた。音がやんだかと思って耳を澄ますと、まだカチカチ音が続いていた。朝も4時くらいに目が覚めて、窓を開けてみたが、未だに鳴り止まず、夜通し音を発していたようだった。

朝になり、窓枠を叩いてみたり、雨戸や窓を開けたり締めたりしたが、突然不意に音が鳴り止んだ。理由はわからないが、それ以来音がしなくなった。

なんとも不思議だが、一階のリビングの外の方は、まだ音が鳴り止んでいない様子だ。こちらは、二階のに比べ少し低音で木をカリカリかじっているような音に聞こえる。カリカリ、コツコツ、コチコチ、チュチュチュなんというか、そんな風な音だ。壁やサッシを叩いたり、ほうきで払ったりしてみると、一時止んですぐまた音がする。

ネズミなどの生き物の類だと、一所にじっとしていないので、動き回る生物ではなさそうだ。その日、妻が壁にヤモリが這っているのを見つけたが、ヤモリは音を立てないので、それも違う。ヤモリは虫を食べてくれる生き物なので、「家守」というだけあって縁起がよい。ヤモリが出たということは、はやり何かの虫がいるのだろうか。

音はどうも、軒先の上の方から聞こえてくるようなのだが、音のする方をよく見てみるが、どうも生き物らしきものもおらず、何が原因かその日もわからず仕舞いだった。

スポンサーリンク

さて、今朝になっても、音はまだしている。ただ、こんどはどうも下の方からする。音の発生位置が変わったようだ。そこには、木でできた小さな棚が置いてある。どうもその方から聞こえてくる。

そこで、木の棚を裏返してみると、そこに繭(マユ)のようなものがいくつかついていた。このような繭は、なにかの蛾のマユで、中に蛹が入っているはずだ。でも、こんな物が大きな音を立てるはずはないだろうと思っていたが、とうとう音の発生源を突き止めた。その動画がこちら。

最初チッチッチッという音がしているが、後半パタパタパタという高速音に変わるのがわかるだろう。どうも、これだ、この音だ。おそらく、木についていると低音だが、軒先のサッシなどの金属についていると高音の機械音として響くのではないかと思われる。

そこで、マユを剥がしてみると、現れたのは確かに蛹。

くねくねお尻を震わしている。この状態では音が聞こえない。どうも繭の中にいないと音が鳴らないようだ。

ナンキンキノカワガ蛹

そして、中には蛹になる前の幼虫のものもいた。

ナンキンキノカワガ幼虫

ナンキンキノカワガ幼虫

緑に黄色の筋、黒の斑点がある。

ネットで検索してみるとどうも、ナンキンキノカワガ(Gadirtha impingens)という蛾のようだ。蛹になると威嚇のため音をだすという特徴があるとのこと。もう、正に先日から奇っ怪な音をだし、私を不眠にさせた犯人はこの方たちだ。

YouTubeを検索してみると動画があって、どうもマユの中で高速で身体を震わせると、マユとの摩擦により音がなるようだ。マラカスのようなものか。繭はちょうど空洞で共鳴装置になっているだろうから、木に付着している場合は低音で、サッシなど金属にふれていると高音の金属音になるのも納得がいく。

ところで、二階の窓にも繭がついていないかしらと、探してみるとありました、ありました。

ナンキンキノカワガ繭

鳴き止んだのは、成虫になって飛んでいったからなのかどうかはわからないが、これが原因だったようだ。

ところで、ナンキンキノカワガは、漢字で書くと「南京木皮蛾」。コブガ科の蛾の仲間(成虫は見たことないので、今回は写真もないが、調べれば皆様写真をアップされている)。なぜ南京かというと、中国原産のナンキンハゼ(南京櫨)という落葉樹につくからだ。

ナンキンハゼと聞いて、全ての謎がとけた。

実は、隣のお宅の木が盛大に茂ってきて、私の家の物置に覆いかぶさるように、進出してきたのだ。というか、すでに物置を通り超えて、物置の屋根は木の枝で覆われている。

ナンキンハゼ

いつ切ってくれるんだろうと思っていても、いっこうに切ってくれる気配がない。ところが、最近になって毛虫が大量に発生していることに気がついた。うちの庭に明らかに毛虫の糞と思われる黒いのがたくさんおちていて、はなはだ迷惑だ。そして、この木、冬になると黄色く色づき落葉する。うちの庭に葉っぱが大量に落ちてくる。隣のお宅の庭は、ジャングルのように大量の草木に覆われているが、諸事情あっていっこうに手入れされるようすも無い。

さすがに、毛虫も落葉も困るので、つい先日木を切ってもらうようお隣のおば、いやおねえさまに丁重にお願いした。そしてこの前、「今月の末には業者に切ってもらうことになった」と連絡をうけたのだ。

そう、この木こそが「ナンキンハゼ」である。

そして、その毛虫がナンキンキノカワガだったのだ。ここに住んで15年以上になるが、今までこんなことはなかったのだが、隣家の木が生い茂ったせいで毛虫が発生し、そいつがわざわざ我が家の軒先で繭を作り蛹になり、奇っ怪なカチカチ音を鳴らしていたのである。

それにしても、この毛虫なにゆえに、食べた木にマユを作らず、我が家の軒先までやってきてマユを作るのか。おそらく、こっちの方が雨風をしのげ、天敵も来にくいからだろう。自然の知恵とは素晴らしい。しかし、この毛虫たちに忠告しておくとすると、「カチカチ音を出すから、私に退治されてしまうのだよ。威嚇音など出さないで静かにしていれば、人間に気づかれることもなく、成虫になって飛んでいけたのに。」ということだ。カチカチ音のせいで天敵たる人間に気づかれてしまうとは、皮肉なものである。

お隣さんがもう少しして木を切ってくれたら、もうカチカチ鳴く毛虫もいなくなることであろう。秋の日に、自然とそのわびしさについて考える今日このごろである。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク

コメント

  1. 隆弘 より:

    先日我が家にも出ました。とても参考になりました。

    • 不眠症社長 より:

      閲覧いただきありがとうございます。最初の数日は正体がわからずとっても気味悪かったですね。

  2. ゆう より:

    これか〜!うるさかったのは、自転車の漕いでない音みたいなのが何回もして正体が分かりませんでしたが、分かりました笑

    • 不眠症社長 より:

      コメントありがとうございます。この虫たちも自然のたまものでありますが、なんとも奇妙奇天烈です。