ひとり会社もいつの間にか第1期が終了し、法人税の申告を自力で行った。
結論: とっても面倒で複雑でわかりにくい
会社を作ったときから「法人税の申告は素人では無理なので税理士に頼まなくてはならない」という税理士先生からの脅迫が巷では相次いでいることを知っていたが、確かにそれは一理ある。こんな面倒でわかりにくいシステムなら、お金さえあればその道のプロに任せた方がよいだろう。しかし、超赤字で自分の役員報酬さえずっと未払いの状態であるのに、10万も20万も報酬を払って依頼することなど到底できない。ここはなんとしても自力でやるしかないのである。
このページでは備忘録を兼ねて法人税の確定申告を行った手順を書いておく。
注意: このページに書いてあることは、あくまで個人的な備忘録であり、税務上の正確さや保証などは何一つない。私の正義と仏に誓い、わざと虚偽でフェイクな情報は載せていないが、どこに間違いが潜んでいるかわからない。このページを参考にして、追徴課税1億円取られても何も責任を負わないことをおことわりしておく。
会社の状況
売上: 微量
経常利益: マイナス大(超赤字)
事業年度: 4月末で第1期終了
事業形態: ひとり会社、事務所は社長の自宅、パソコンでちょこちょこやる仕事
使ったツール
会計ソフト: フリーウェイ経理Lite(無料版)
税務ソフト: 全力法人税(無料版)、フリーウェイ税務(無料版)
申告ソフト: 法人税→ e-Tax(インストール版)、法人県民税と法人市民税→eLTAX(PCdesk)
参考書: 井ノ上陽一. 新版 ひとり社長の経理の基本. ダイヤモンド社, 2016
※ 会社設立当初、会計ソフトはfreeeを1年契約していたが、今期すでに払うお金がないので契約更新しなかった。フリーウェイ経理Liteで全く同じ数字で決算書が作れることは確認済みなので、会計ソフトはフリーウェイ経理をベースとしている。
手順1 決算書の作成
まず会計ソフトで決算書を作成する。期中に発生した全てのお金の動きを仕訳した状態で決算書を作ること。申告書の作成は大変労力を要するため、間違いがあると何度もやるのは困難だ。おおもとの決算書に間違いがあると、後戻りが大変なので、念には念を入れて仕訳と数字のチェックをしておくこと。
手順2 法人税の確定申告書の作成
ここがメインの作業となる。
法人税申告書作成の重要な流れ
法人税申告においてはまず、ここのフローを理解するのが重要。まず、手順1で作成した決算書は実は仮の決算書である。なぜなら、この申告で支払うべき法人税は期中に未払法人税として仕訳しておかなくてはならないからだ。すなわち、ここから行う法人税申告書作成の過程で計算された法人税を、再び会計ソフトに入力し未払法人税を計上しておく必要がある。それで晴れて決算が確定する。要するに法人税申告の流れは、
- 会計ソフトで仮の決算書を作る
- その決算数字をもとに法人税を計算する
- 再び会計ソフトに戻り、未払法人税を計上する
- これを最終的な決算数字とする
というフィードバックループが存在している。ここが分かっていないと何やってるかわからないことになる。
税務ソフトの選定
いかんせんお金がないので、税務ソフトも無料で使えるものを選定した。会計ソフトはフリーウェイ経理Liteを使っているので、その兄弟版であるフリーウェイ税務を当初使ってみたのだが、いかんせん難しい。何が難しいかと言うと、法人税申告は大量の帳票を作成しないといけないが、これをある順番で作っていく必要がある。フリーウェイ税務では申告に必要な様々な帳票が作成できるものの、手順などは全く示されておらず、素人がいきなりとっかかるには困難を極める。そこで、今回とった行動は、
- 上記参考書で申告の流れを把握
- 全力法人税で入力
- 2の入力情報を見ながら、フリーウェイ税務で帳票作成
- フリーウェイ税務からe-Tax用にファイル出力
という流れにした。
まずは、参考書で申告を自力でやる流れが書いてあるので、それで申告書の仕組みや必要な帳票を把握する。次に全力法人税で決算情報や会社の基本情報を入力していった。
全力法人税は入力するだけなら無償で使えるクラウドの税務ソフトである。このソフトは素晴らしく、入力は基本ウィザード形式になっており、次々に入力していくだけで必要な帳票が作れるという、人に優しいすぐれものである。作成した申告書類は印刷したりe-Tax用にファイル出力したりするのは有料である。初年度は2万円ちょっとなので、それが払えるなら断然出力まで行った方が得である。ただ今回は無い袖はふれないので、やむなく無料のまま使った。無料でも申告書以外のいくつかの書類はPDFでダウンロードできるし、申告書類も入力画面の数字は見れるので、それらを見ながらフリーウェイ税務に転記していき帳票を作成することにした。
フリーウェイ税務は作った書類を無料でe-Tax用のファイルに出力できるので、それを最終的にe-Taxに取り込んで申告を行う流れとした。
申告に必要な提出書類
ここで今回提出した書類をあげておく。
■申告書類
- 別表1 普通法人等の申告書
- 別表1次葉 普通法人等の申告書
- 別表2 同族会社等の判定に関する明細書
- 別表4 所得の金額の計算に関する明細書
- 別表5(1) 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書
- 別表5(2) 租税公課の納付状況等に関する明細書
- 別表7 欠損金又は災害損失金の損金算入に関する明細書
- 別表16(6) 繰延資産の償却額の計算に関する明細書 B
- 法人事業概況説明書 事業概況説明書
■決算書類
- 貸借対照表 A
- 損益計算書 A
- 株主資本等変動計算書 A
- 個別注記表 A
■勘定科目内訳書
- 預貯金等の内訳書
- 売掛金(未収入金)の内訳書
- 買掛金(未払金・未払費用)の内訳書
- 借入金及び支払利子の内訳書
- 役員報酬手当等及び人件費の内訳書
- 雑益、雑損失等の内訳書
■地方税申告書類
- 第6号様式 道府県民税・事業税・地方法人特別税の確定申告書
- 第6号様式別表9 欠損金額等の控除明細書 B
- 第20号様式 市町村民税の確定申告書
※Aは全力法人税で作れない、Bはフリーウェイ税務では作れないもの
※固定資産台帳は提出せず。固定資産がないので。
※適用額明細書は提出せず。赤字で税金の特例などうけないので。
全力法人税への入力
まず仮の決算書をもとに全力法人税へ入力していく。途中で法人税が確定するので、それを再び会計ソフトに未払法人税として計上する。これで決算書が確定する。
これをもとに再度、全力法人税に戻り必要な項目を埋めていく。全力法人税は無料版では印刷不可なので、ここまで。申告書以外の内訳書などは印刷できる。
フリーウェイ税務への入力
全力法人税の入力データを見ながら、フリーウェイ税務で同じ書類を作っていく。フリーウェイ経理Liteからデータをインポートできるが、決算書の一部が作られるだけで、税務申告書類は自動で入力されないので、インポート機能はさほど便利ではない。入力を終えたら、e-Tax用にデータを出力する。
■フリーウェイ税務の注意事項
- 赤字申告の場合、なぜかマイナスで税金が計算されてしまう。普通はゼロなのに。マイナスの場合の場合分けがされていないと思われる。手で修正する。
- ブラウザはChromeに対応していない。Internet Exploreに対応。Chromeだと帳票の表示がおかしくフォーマットが崩れている。
- 最初の基礎情報を入力するところで、フリガナに漢字が入力されるとエラーのコンソールが永遠出続けてしまうという無限ループに陥る。
- IEだと一括印刷をPDFにするのがうまくできない。ここはChromeで行う。
- 最初、事業年度を選択するのだが、事業年度の定義がよくわからなかった。期初の年度を指定するのかと思って作成したが、申告をするときの年度ではないかと思われる。できた帳票の横に書いてある「**年以降終了事業年度分」というのが税務署から送られてきていた書類より1年前のものになっていた。再度作成する気力がなかったので、そのまま提出した。ただフリーウェイ税務で最新年度版が使えるようになるのが少し遅い(当社は4月末決算だが、5月終わりくらいに更新されるようだ)。
手順3 申告書提出
e-Taxで申告
フリーウェイ税務で出力したデータをe-Taxに組み込む。e-Taxはインストール版のものを使っている。
ここで注意は、必ず全ての帳票を確認して正しく読まれているかチェックすること。ところどころ抜けがあったりする。
フリーウェイ税務で作れない書類はe-Taxで作成する。
全ての書類が出来たら、電子署名した後、送信して申告する。
■e-Taxの注意事項
- e-Taxでも全ての帳票が作れるので、フリーウェイ税務を介さず作成することもできるが、合計などの自動計算がされないのと、入力画面の文字がとても小さくて読みにくいので、使いづらい。
- 個別注記表が50文字以上だとエラーが出る。さほど重要ではないらしいので、適当に短くした。結局書いたのは、収益及び費用の計上基準、その他計算書類の作成のための基本となる事項、当期末株式数の3項目のみ。
eLTAXで申告
次にeLTAXで地方税を申告する。eLTAXのPCdeskを使用している。
フリーウェイ税務から出力されたeLTAX用データは読み込みエラーで使えなかった。e-TaxからeLTAX用に共通データを出力できるので、それを取り込んだ。ただし、会社情報などのデータだけで金額などは取り込めないので、フリーウェイ税務のデータを見ながらeLTAXで帳票を作成する。
入力したら、電子署名して送信する。
手順4 納税
今回、赤字なので法人税はゼロ、納めるのは県と市の法人住民税の均等割のみ。1期目で丸1年に満たないので、11ヶ月分と1ヶ月分割引かれる。それにしても、赤字なのに7万円も納税しないといけないのは、なんとも割に合わない。
県と市への納税は、eLTAXからできる。申告したあと、[メニュー>電子申告連動]で納付情報発行依頼を行う。受付後しばらくすると納税可能となる。
eLTAXの[メニュー>納付情報の確認・納付]からインターネットバンキングにて納付した。
これにて終了。
始めてで、いろいろ調べならがやったので1週間ほど費やした。慣れればもっと早くできるだろう。
メモ
- 非分割法人:事業所は一つ
- 同族会社:ひとり会社で資本金1億円以下なら
- 税務署と県と市から申告書類が送られてくるのが、決算日から1ヶ月くらいしてからだった。住民税の税率などはこの書類を確認してから入力すること。
- 赤字の場合の申告の仕方の情報が少ない。世の中の多くの会社は赤字だというが、赤字申告の本などあれば売れないだろうか。
- とにかく念には念を入れて数字の間違いがないか何度もチェックすること。
- 先日、フリーウェイ税務が今年度でサービス終了するとメールが来た。まさか、フリーウェイ経理まで終了しないことを祈る。
コメント
はじめまして、私もひとり法人を所有しているものです。今年初めて確定申告しようとしており、手続き中です。不眠症社長さんと同じように税理士に頼まず安く確定申告をしようとしておりましたが、全然情報がなく困っておりました。そんな中、こちらの情報がとても参考になりましたので、大変感謝しております。ありがとうございます。
ご参考いただき恐悦至極に存じます。このIT全盛の世の中、もっと簡単な仕組みで正しい納税ができればいいのですが、どうも法人税申告は難しいです。
すごく参考になりました!
情報を共有していただきありがとうございます☆
閲覧いただきありがとうございます。
はじめまして。
私も一人経営で、自分で申告しています。
同じような境遇の方の体験を見れることはとてもありがたいです。ありがとうございます。
といっても私の場合は商工会の会計ソフトを利用していますので、数字についてはチェックしてもらっていますが。
近年になってフリーウェイ税務の存在を知ったため、二年ほどしか活用できずに終了となりガッカリしています。
今後、
>「フリーウェイ経理」で電子申告用の財務データを出力する機能をリリースする予定
が、どの程度なのかによりますが、有料の『税理士いらず』を使用しようか悩んでます。(私の場合は商工会のソフトから移行する感じなのでそれでも出費は減ります)
不眠症社長さんはどの様にされる予定でしょうか?
nori様 コメントありがとうございます。
当社は、もうすぐ今期の申告時期なのでどうするか考えないといけませんね。全力法人税の有料版にするのが手っ取り早くていいかなと思ったりしています。
eTaxは、個人の確定申告作成コーナーが素晴らしく使いやすいので、法人税にも対応しないかなあなんて淡い期待を抱いていますが。AIとIT全盛時代なので、国税庁も頑張ってくれるとありがたいのですが。。。