【書籍】仏教の思想2 存在の分析<アビダルマ>

桜部建、上山春平『仏教の思想2 存在の分析<アビダルマ>』、角川書店、1969年

「唯識三年、倶舎八年」。「倶舎論」を習得しようとすると、何ともまあ長い年月がかかるということか。

ヴァスバンドゥ(世親)は5世紀ころ「アビダルマ・コーシャ」(阿毘達磨倶舎)を記したらしいが、サルヴァースティヴァーディン学派(説一切有部)にはやや批判的であったとのことだ。しかし、ダルマを七十五種に分類したのをはじめ、原始仏教で説かれた真理を理論的に分析分類し、膨大な仏教理論体系を作り上げた有部の精神はとっても共感できるものがある。理屈が膨大になれば、どこかの脆弱性を補うために、さらに理論を付け加えなくてはならなず、その体系はどんどん膨れ上がっていく。とても理屈っぽい人たちの集団であったに違いない。ただし、その理屈も釈迦の真理を何とか理論建てようと苦心した結果であろう。大乗仏教の祖たちも倶舎論は熱心に勉強したというから必読の書であるといえる。

本書は、宇宙観をはじめ、ダルマの体系、色、心、業、煩悩、道など「倶舎論」のひととおりをわかりやすく網羅している。ひとまずこれを読めば、膨大な理論体系をざっと概観できるようになっている。八年かけていないけれど、とりあえず二週間程度で倶舎論を俯瞰した。

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