ひょんなことから猫を飼い始めた。
市の動物センターから保護猫を譲り受けたのだ。子猫というほど小さくはないけれど、まだ1歳になっていないメスの雑種である。いわゆるトラ猫で、世間ではキジトラというらしい種類である。
譲り受けるには最初に、市の方がうちが猫を飼うのに問題ないかを調査しに家庭訪問に来られた。その後、試行期間で、その猫はうちに来ると最初のうちは怖がって、えさも食べなかったのだが、数日するとすっかり慣れて、さすってやるとゴロゴロのどを鳴らすようになった。そこで、正式に譲渡の手続きをして、我が家の一員となった。
私は子供のころからの動物好きでいろいろな生き物を飼ってきた。子供のころは、「ムツゴロウさん」と「わくわく動物ランド」と「野生の王国」のテレビで動物学を学び、動物図鑑を擦り切れるまで読んだ。
猫も2匹飼った。はじめて猫と暮らしたのは小学生のころだろうか、シャムネコに似た色をしたカッコのよい猫だった。歳を取ってくると、よく吐くようになって、最後はかなり苦しそうであった。もう40年近くも前の話なので、猫は自由に外に出て、家と外を行き来していた。それが普通である時代だった。
で、その猫はかなり体調が悪かったのだろうけれど、あるときいなくなってしまった。わたしの祖母は「猫は死に際を人に見せないので、自分から家を出て行ったのだ」と言っていた。それを聞いて何とも悲しかったが、猫とはそういうものかということを知った。
2匹目の猫は、真っ黒なクロ猫で、私が高校生くらいのときに、近所からもらわれてきた。私は大学に行くためにすぐに実家を出てしまったが、私が結婚した時にもまだその猫は実家にいた。それから、しばらくして亡くなったという知らせがあった。
現在は、私の妹家族が両親と一緒に実家に暮らしているが、姪っ子も動物好きと見えて、実家には小さなチワワ犬と、インコと、メダカと、うちの母が公園で拾ってきたという三代目の猫も一緒に暮らしている。
さて、私の家はというと、私が結婚する前から25年も同居しているミドリガメがいる。また、この前まで、うちの娘が保育園のころ金魚すくいですくってきた小さな金魚が1匹、10年近く元気に泳いでいた。それがこの夏に亡くなってしまい、もう中学生になった娘も金魚とはいえ、悲しんでいた。
そこで、娘が猫を飼いたいと言って、自分で市のホームページから保護猫譲渡の取り組みを見つけてきたのだ。
今の猫は、もう外に出したりしない。家の中だけで飼わないといけない。そして、猫の健康管理には十分注意するよう、譲渡のときに教えていただいた。毎年ワクチンを接種したり、ノミやフィラリアの予防薬を毎月与えたり、結構大変である。30年も40年も昔の猫飼育の知識では通用しないので、色々調べたり、獣医さんに聞いたりしている。
だから、猫の寿命も延びて、今や20歳くらいまで長生きするそうだ。そうなると娘は30歳を超えるし、私は70歳になる。もっとも、ミドリガメだって40年くらいは生きるというので、猫もカメもこれからも一緒に長く暮らしていくことになる。
生きものは世話は大変なのだけれど、やはり家族ではあるし、色々教わることも多い。猫もカメも金魚だって、よきパートナーなのである。