会社名の一部が商標登録されている
ネットでエゴサーチなるものがある。自分自身を検索しどのような投稿があるか確認して一喜一憂するという行為である。
自分は別にインフルエンサーでもなければ有名ユーチューバーでもないし、そもそもSNSやYouTubeで発信なんぞしていないため、個人としてはエゴサーチなどをする意味はない。
しかし、自分の会社がどのようにネット上に出てくるかというのは、ときどき検索を行い確認している。会社の営業のほぼすべてが、自社サイトへのネットからの流入に頼っているため、ネット上の検索結果というものは気になるのだ。いちおう会社のSNSやYouTubeもある(更新頻度が恐ろしく少ないが。。)。
先日も会社名やサービス名などで検索を行ってネット情報をチェックした。そのサーチの最中で、ふと、それらが商標登録がされていないかということが気になった。
会社を設立した際には、会社名はネット上にないか、商標登録されていないかなどを一通り調べ、誰もこんな名前つけてないなというのを確認して会社名をつけた。設立当初はお金もなく、そもそも超零細の極小企業のため、予算をはたいてまで商標登録をしようと思わなかった。
しかし、あれからもうかれこれ8年の月日が流れ、超零細企業ながら少しばかりは売上がたつようになり、ネットで検索すればそこそこヒットするようになった。ネット検索で上位になるためには、SEOなりなんなり地道な活動が必要で、多大な時間と労力をかけてきた。
商標が登録されているかどうかは、独立行政法人工業所有権情報・研修館の「特許情報プラットフォーム J-PlatPat」というサイトで簡単に検索できる。
ここで、自社名を検索してみると、なんとその一部が商標登録されているではないか!!
うちの会社名をAABBCCとすると、AABBの部分が商標登録されていたのだ。この商標を登録したのは、うちとは全く別業界で商品やサービスも被らない会社だ。その会社は自分もよく知っている会社で、その分野では有名な会社である。しかも、私もその会社の商品を愛用していたりする。
業界が違うので特に心配はないとは思うのだが、商標には区分というものがあり、その区分内で類似の商標が使われると使用差し止めや損害賠償などの仕打ちにあうこともあるらしい。調べてみるとその商標の区分が、何とうちの会社の事業内容と同じような区分でとられていたのである。別に悪意があるわけではないだろうし、その名称や内容からしてなるほどと思う区分なのだが、うちの会社が類似の商標と認識され、
「やいやい、おたくの会社名が目障りじゃけえ、名前変えてつかーさいや、アドレスも被るけえ、使わんといてくれーや」
などとサングラスをずらして、下からにらみつけられると、ほとほと困るのである(ちなみに、その会社は広島の企業ではない)。
なぜそこまで恐れるかというと、その商標の名称でネット上で検索すると確実にうちの会社が検索される。どうもその会社のサービス・商品?はまだ製品化、公開されていないようで、まったく検索にはひっかからない。ただ、いざ新商品をリリースしようとしたときに、こんな目障りな状況だと、いつ難癖をつけられるかわからない。
ちなみに、その会社がその商標を登録したのは、昨年である。うちは10年近くも前からこの会社名を使っている。ところが、商標は後出しじゃんけんがまかり通る世界で、最初に使い始めたとかは関係なく、先に登録した方が勝ちという、そら恐ろしい弱肉強食な世界なのである。
弁理士先生へご相談
そのような状況なので、小心者の私は夜も眠れずまた不眠になりそうだったので、専門家の判断を仰ぐことにした。ネットで検索すると弁理士先生がたくさんヒットするが、どうも直に頼むとかなりの手数料がかかりそうである。そこで、某アウトソースのお助けサイトで、お手頃な先生に相談してみることにした。
まずは、オンライン会議にて状況を相談する。だいたいを要約すると、「会社名として使うぶんには商標権侵害にならない。サイトで会社名を出すぐらいはたぶん大丈夫」ということらしい。商品名として商標を使うと類似で被るのでよくないらしいのだが、まあこれは業界も違うし、相手が敵対的かどうかにもよるので、訴えられる可能性は無きにしも非ずだが、そこまで気にする必要はないかも知れない。
あとは、保険としてやはり商標登録はしておくに越したことはないとのこと。しかし、事業内容の区分では、すでにその類似の商標が登録されているので、少し違う区分で登録するのがよいとの提案があった。違う区分とは言っても、やっている事業を総括するような分野を表すので、よいだろう。
商標登録の出願
ということで、そのまま商標登録の願書を作成いただくことに。願書を作成してもらうと、文書が電子データで送られてきて、それを印刷して印紙を貼って郵送するだけで、出願できるという。本当は、法人税から事務手続きまで全てオンラインでこなしている身にとっては、商標出願もオンラインでやりたかったのだが、一言一句でも間違うと突き返され、修正手続きがややこしいことになると脅されたので、ここは素直に紙で出願することにした。
ちなみに、商標は特許庁の管轄で、印紙も普通の収入印紙ではなく、特許印紙なるものを添付しなければならない。この印紙は、そこら辺の小さな郵便局には売ってなくて、大きな本局に出向かなければならない。しかも、事前に電話で特許印紙がほしいとお伺いを立てなくてはならないという面倒くささだ。やっぱり、オンラインにすればよかったと思ったが、頑張って特許印紙を手に入れ、簡易書留にて願書を郵送した。
なお、今回は会社名とサービス名の2つを出願した。会社名は株式会社を除いたカタカナ部分を申請、サービス名はアルファベットである。2つだとなんだかんだで十数万円の費用が掛かるが、これもまた必要経費と後学のための勉強代である。
商標の呼び方
商標登録にあたって一つおどろいたことに、商標の呼び方(呼称)というのは特許庁の審査官が勝手につけるらしい。たとえばアルファベットの商標を申請すると、そこから類推される呼び方を勝手に考えて付けられるとのこと。要は実際の呼び方が登録される保証はないらしい。でも考えてみれば、戸籍の名前と同じと言えば同じである。漢字の当て字にキラキラネームを付けてもその通り読まれる保証はないし、そもそもふりがなは戸籍に登録されない。
商標の類似判断には呼称が重要らしいのだが、肝心な呼び方を指定できないというのも、なんとももどかしくはあるが、まあそういうものらしい。どうしてもというなら、呼び方を別に登録したり、アルファベットにふりがなを付けて一つの商標として登録する手もあるようだが、まあ今回は一つでいくことに。カタカナは問題ないが、アルファベットのサービス名はなんと呼ばれるか楽しみではある。
電子化手数料
さて、出願して2週間ほどすると、工業所有権電子情報化センターなるところから、電子化料金払込用紙が送られてきた。今回は、紙で出願したので、それをわざわざ電子化するために手数料を払えということのようである。最初からオンラインで申請していれば、こんな無駄なお金を払う必要はないのだが、今回は致し方ない。商標一つにつき、基本料と紙1枚の電子化代で3200円、それが2つの商標で、合計6400円である。
銀行か郵便局に行ってその払込用紙で支払えばよいのだが、もう面倒なので、ネットバンクで振り込むことにした。もう紙のやり取りはほとほと面倒である。
インターネット出願ソフトのインストール
いちおう電子化手数料を納めれば出願手続きは終わりなのであるが、今後のこともあり一応オンラインで出願するための手続きだけやっておくことにする。以下のサイトの手順に従って、ソフトをインストールする。
利用登録(電子証明書が必要)も済ませて、準備完了。これを使えば簡単にオンライン出願できそうだったので、今後もし出願することがあればこれを使おう。そうすれば電子化手数料を取られなくて済む。なお、登録時にはこれを使えばネットバンクで登録料を納付できそうだったので、また使ってみようと思う。
審査結果が出るまでに半年ほどかかるようであるが、弁理士先生曰く、98%の確率で一発合格とのことだったので、気長に待っていよう。
追記
出願から3週間ほどして、「出願(申請)番号通知」が送られてきた。出願番号が付けられており、今後はこの番号で管理される様子。
追記2
出願から1か月ほどして、「識別番号通知」が送られてきた。天下の特許庁で手続きをすると住所、名称が登録されて、識別番号を付けていただけるらしい。ありがたや。