鎌田茂雄、上山春平『教の思想6 無限の世界観<華厳>』、第6版、角川ソフィア文庫、2008年
仏教の思想 6 無限の世界観<華厳> (角川文庫ソフィア)
華厳経のねらいを端的に表すと、この世の浄化である。汚濁に満ち煩悩におおわれた衆生そのものが、ほとけの生命であるという無限の宝を見出すことだ。いわゆる性起説である。本来われわれ凡夫は生まれながらにして成仏しているという考え方である。ただ、それでは遊び呆けて悪さばかりするのが凡夫の性というもので、そこで十地品(菩薩の修道の10段階の過程)が説かれる。これは納得である。
華厳経はほとけの悟りの世界を説いたものであり、八会、三十四品から成り、とくに性起品、十地品、入法界品が重要とのこと。華厳経の世界観は時間的にも空間的にも広大無辺でまさに限りがない。華厳経の教主は毘盧遮那仏で、あらゆるものが無限の光明に照らされている世界を目指している。これは「一即多、多即一」であり、ほとけの一念により衆生の心がすべて映現する。
仏教経典は解説本だけ読んでも全体像のつかめないことが多いので、ぜひ華厳経自体を読んでみたい。
読書メモ
- 大方広仏華厳経
- サンスクリット原典は失われている。中央アジアで編纂
- 教主は毘盧遮那仏
- 新しい宗教が成立する要因①神通力をそなえた宗教者②教理の組織者、宗教体験の内容を説明
- 日本では明恵上人(持律主義者、文覚に師事)
- 法華経は法を説く、華厳経はほとけを説く
- 入法界品。善財童子の究道物語(53人の先生を訪ねる。女性を含む様々な人々。人間の価値はただ菩提心の有無による)
- 莊子の思想と類似
- 五教十宗の教判
- 三界唯心:生死、苦悩、凡夫の世界は心のもちかたによって生まれる。
- 円融無礙
- 法界縁起:真理の領域
- 無尽縁起
- 融通無礙:二つ以上のものが、互いに妨げることなく融通している
- 異体、同体、相入、相即
- 華厳には止観の実修はない