【書籍】龍樹

中村元『龍樹』(講談社学術文庫)、講談社、2002年

ナーガルジュナ(龍樹)の『中論』をベースに解説された本。

ナーガルジュナ(龍樹)は、紀元後150~250年くらいの人で、八宗の祖とも呼ばれ大乗仏教に多大な影響を与えた。『中論』により、空を論理的に説明し、説一切有部に代表される実在論者たちを論破している。

龍樹は若いころ、透明人間の術により王宮に忍び込み女官たちを犯して遊んだなどという、とんでもなく怪しい物語が伝えられるほどであるが、実際そうとう頭がよかったようだ。

論敵は実在論者で、「法は、それ自身の本質(自相)をもつ実有として存在する」という実在論を否定している。

『中論』は一回読んだだけでは、私の頭では理解できないが、本書の解説を読んでから再度読むと何となく理解できる。論法は帰謬論法(プラサンガ)であり、自説を主張せず、相手の論旨の矛盾を突く方法である。

『中論』では八不(不生、不滅、不常、不断、不一、不異、不来、不去)から空や縁起を説いている。本書によると、龍樹系列の中観派は、縁起論者であるという。縁起はいわゆる十二縁起のような時間的生起関係ではなく、相互依存や相互限定といった相依性の縁起を説いているとしている。同様に、無我や無常も空の観点から説明される。

空とは非有非無の中道であり、決して「無」ということ(「無」を実在とみなすということ)ではない。また、涅槃は輪廻と同じものであり、これもまた空であるという。凡夫の立場から見た自然的存在の領域において輪廻が考えられ、覚者の立場から見ると想関関係において成立する縁起により十二因縁はことごとく滅した状態すなわち涅槃となるという。

なるほど、空というのを理解していくには、本書は読みやすく良書である。

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