佐々木閑、宮崎哲弥『ごまかさない仏教 仏・法・僧から問い直す』、新潮社、2017年
初期仏教の基礎を示す著者二人の対談本。仏法僧をベースにその意味が細かく解説されている。いまさらながら、宮崎氏の博学さに驚く。
読書メモ
- 仏教聖典=阿含・ニカーヤ(パーリ五部 長部・中部・相応部・増支部・小部)
- 仏伝=マハーヴァッガ、ニダーナカター、ブッダチャリタ
- 最古層→スッタニパータ第四章、第五章
- 悟ったもの=十二支縁起(最初は原初的な縁起説)、四諦八正道
- サンガ→余剰の富がある場所に形成、金融業もやっていた
- 阿羅漢→もともとはハードルが低かった
- われわれもブッダになれる→ブッダの予言が必要→釈迦はもういない→阿弥陀如来の案出 大乗仏教
- 法=演技、一切皆苦、諸法無我、諸行無常
- 釈迦:相対的世界の奥に存在要素は実在する⇔竜樹:言語こそが苦の淵源
- 六因五果四縁説-具舎論・・・多因多果的
- 三世両重説-胎生学的十二支縁起
- 輪廻-初期は重要視されていなかった?
- 差別思想-完全平等というわけでもない。最初はそれほどなかったのでは?
- 輪廻業報思想
- 名色分離智=言語体制を解体して得られた知慧
- 善因善果⇔善因楽果
- 高次元の善=悟るために役だつ行為⇔低次元の善=業の結果を生むのでよくない
- 世俗的な善を行うときは「思」を止めて行う
- 善悪=行為と悟りの距離であり、倫理規範ではない
- 苦-楽・苦・不苦不楽。一切皆苦。楽を含めすべてが苦。
- 三苦=苦苦性(通常の苦)、壊苦性(楽が壊れていく)、行苦性(静まっているように見えるが実際は無常である)
- 断滅論⇔常住論 仏教ではどちらも邪見
- 一切皆楽→キリスト教の世界観
- 常楽我浄→大乗仏教、如来蔵思想
- ミリンダ王の問い=人とは何か?車とは何か?
- ~見=悪しき見解、偏見
- 我所見=所有物がある。
- 有身見=五蘊を自己と錯視する
- 非我説→いま我としているものは真の我(=アートマン)ではない。中村元の説。
- 無我輪廻説→縁起し続ける。
- 世俗の無我⇔勝義の無我(=輪廻とは共存しえない)
- 自業自得→大乗仏教では成立しない。廻向=自分のなした善行を他にも差し向け自他ともの悟りを目指す。利他を強調。
- 三世実有説→映写機の譬え
- 過去現在未来にも実体がある←説一切有部
現在有体・過去無体←経部
現在も実体がない←唯識派。阿頼耶識=本当の実体
なにもない←中観派 - 相続転辺差別=バタフライ効果
- サンガ=四人以上のお坊さんが、独自の規則(律蔵)を守りながら修行のための集団生活を営む組織
- ブッダゴーサ以降→ヒエラルキー化
- 律→建前上は釈迦以来変わってない。改正の機能がない。
- 日本にサンガがない→仏教はあくまで政治の一環、外交の道具。朝廷は年分度者により僧侶を公務員化。
- 律→パーリ律、四分律、五分律、十誦律、根本説一切有部律、摩訶僧祇律
- 律の構成→波羅提木叉・経分別(禁止事項)、犍度(サンガの運営マニュアル)
- 律の作成→随犯髄制。罪刑法定主義。動機主義。
- 四波羅夷=性交の禁止、窃盗の禁止、殺人の禁止、悟ったふりの禁止
- テーラワーダ歴史原理主義