土屋賢二『ツチヤ教授の哲学講義 哲学で何がわかるか?』(文春文庫)、文芸春秋、2011年
本書は、仏教書ではないのだが、哲学は仏教と深く関係している。インド哲学には「哲学」という文字が入っている。
著者の本は、エッセーが面白く(哲学の専門書ではなく)、人を食ったような文章は読んでいて痛快である。それに、単にお笑いのエッセーストというわけではなく、哲学者という知的でアカデミックな頭脳が書くことに面白さの根源がある。
本書は、そんな著者のまじめな哲学の本である。といっても、専門書ではなく、大学の講義録(一般教養なので専門外の人向けであろう)だ。素人の私にもわかりやすく哲学とは何かを説明してくれる。
形而上学、プラトン、ゼノンのパラドックス、ベルクソンの純粋持続、デカルト、イデア論、現象学などをバッサリ切り倒し、ウィトゲンシュタインの言語ゲームと『論理哲学論考』をわかりやすく説明している。「哲学の問題は、解決できないし、そもそも問題とは言えない」というウィトゲンシュタインのことばも納得がいく。
結局、「哲学は新しく事実を発見することによって問題を解く学問ではない。ことばとことばの関係、論知的関係を分析することしかできない。」というのはなるほどなとうなずける。
こんな先生の講義を受けてみないものだと思わせる一冊。
読書メモ
- ハイデカー『存在と時間』
- ゼノンのパラドックス 飛ぶ矢は飛ばない
- 形而上学
- ベルクソン 時間=純粋持続
- アリストテレス 四原因(形相因、資料因、目的因、起動因)
- デカルト 蜜蠟の議論
- 循環論法=証明すべきことを最初に前提する
- 錯覚論法
- 現象論 センスデータ
- イデア論
- デカルト「われ思う、ゆえにわれあり」→常に真
- フッサール 現象学
- ヘーゲル『精神現象学』『大論理学』
- ウィトゲンシュタイン『哲学探究』→言語ゲーム
『論理哲学論考』→「哲学の問題に解決はありえない。語りえないものについては沈黙しなくてはならない。」
要素文、複合文