鈴木大拙著、佐々木閑訳『大乗仏教概論』(岩波文庫)、岩波書店、2016年
著者が本書の出版を許可せず封印してしまいたいと強く思っていたと訳者後記で明かされる。いわば大どんでん返しの推理小説のような仏教書。とはいえ、本論はわかりやすく大乗仏教が概説されている。どこが問題なのか、最後まで読んで再読するとよい。
読書メモ
- 第一戒はあらゆる殺生を禁じるものであるが、菩薩は自分の信奉することが正しく、それが全体からみれば人間に利益をもたらすものである場合には、すすんで戦争にも参加するものである。
- 業説が、我々の社会や経済が持つ不完全性の原因を説明するものであるなどとは決して考えてはならない。業の法則が最も強く作用する領域は我々の道徳世界であり、そしてそれは経済社会にまでは及んでいない。貧困は必ずしも悪行の結果ではないし、逆に金満は善行の結果というものでもない。
- カント「判断力批判」。美的芸術は、たとえそれが芸術として意図したものであっても、自然のように見えなければならない。
- 鈴木の思想がベースとしている日本仏教は、インド大乗仏教よりもむしろヒンドゥー教に近い考え方をする。